歌舞伎役者をテーマにした作品。そもそも歌舞伎にはあまり興味ないからスルーするつもりでいたが、あまりに評判がいいので観ることにした。
作品は噂どおりどころか予想を上回る大傑作。これは劇場で見るべき作品で、今回劇場鑑賞できたことは幸運だった。
とにかく演出力が凄い。人の半生を描く映画は大概 大味になってしまうものだが、約50年くらいの時間を描くドラマにして全くダイジェスト的になっていない。時代が変わっても次は何が起こるのだろうと物語に惹きつけられる。3時間の上映時間は決して長くなく、もっと長くてもいいくらいに思えた。
特に上手いと思うのは一つのシチュエーションが後に同じショットで出てくるところ。1回目に観客にインプットされた記憶を頼りに時間経過後の変化を同じシチュエーションを使って描く場面が何度も出てくる。オーソドックスながら映画的な手法が成功している。演出もだが脚本もよく練られていると思う。
歌舞伎の知識が無くても楽しめる作りになっている点もよかった。劇中大きく盛り上がる曾根崎心中にしても、舞台を知らなくとも演目とドラマとの絡みがどんな意味を持っているかは理解できる。もちろん歌舞伎についての造詣が深ければ感動はより深いに違いない。
血筋と才能いう2つの要素が主人公たちの運命を翻弄する。一人は名門歌舞伎の後継ぎの男、もう一人は任侠の一門に生まれ才能のみでこの世界に入った男。そこには当然 感情のぶつかり合い、妬みや裏切りなどあるわけだが、この物語はそれら困難を乗り越える友情物になっている点が素晴らしい。お互いが足を引っ張り合うことなく、歌舞伎の世界で切磋琢磨していく姿が胸を打つ。
吉沢亮と横浜流星。この2人の若い役者の存在感。役者そのものが題材なだけに高度な演技力を求められたと思うが、臆することなく迫真の息づかいがスクリーンを通じて伝わってくる。魅力的な俳優たちだ。そして人間国宝を演じた田中泯や主役の脇を固める渡辺謙と寺島しのぶなどベテラン勢の存在も印象的だった。まさに役者の演技を見るための映画でもある。
満足度:★★★★☆(5点満点中4.5点)





