(過去ブログから転載)
・著者:ブラム・ストーカー(訳:平井呈一)
・発行:創元推理文庫
・出版:2014年2月21日 第47版
海外の古典小説は読みにくい物が多いのだが、この作品は意外にとっつきやすくサクサク読むことが出来た。あらすじは映画などを通じて知っているので映像をイメージしやすかったのかもしれない。しかし550ページに及ぶボリュームは時々心地よい眠気を誘い読了まで1ヶ月を要してしまった。
主な登場人物はドラキュラにやられた弁理士、その妻のミナ、その幼馴染のルーシー、ルーシーにプロポーズした3人の男たち、そしてドラキュラを追い詰めるヴァン・ヘルシング教授である。この小説は彼らの日記と手紙で語られる。それぞれの人物を通じて見た事、感じた事が証言のように提示されて忍び寄る恐怖の正体に迫っていく。一人一人の日記や手紙からはドラキュラの正体は少しづつしか明かされず、それらがコラージュ的に織り込まれて巧みに物語を構成していくのだ。
映画ではドラキュラVSヴァン・ヘルシング教授の対決を描いているものが多いが、小説ではヘルシングに比重を置いていない。ネタバレになってしまうがドラキュラにとどめを刺すのもヘルシングではないのだ。表面的なストーリー小説でなく恐怖の本質を追求している。それは怪物の特性、つまり「生きている死」によってエロスとタナトスを際立たせ、ドラキュラと犠牲者との異形ともいえる性愛を描写する。又、神と悪魔、理性と幻想との対比も匂わせながら人間の強さと弱さを映し出すエレメントもこの物語の魅力だ。
初出版が1897年というから100年以上前の小説である。それがいまだに再販を続けているという事実はまさしく吸血鬼並みに不死身の物語として今も現役性を保っている。正にモンスター小説である。


